昔の話。
私は常に空腹で。
今でも食い意地を張っているのは、きっとあの頃の空腹を体が覚えているから。
慢性的に体調が悪く、僅かな食事に耐えるしかなかった頃があった。
だから、私は空腹になるとすぐ不機嫌になる。
もちろん、八つ当たりなどはしないけれど。
令和の時代に空腹の辛さなど訴えても共感なんて得られない。
食べられることがどれほどありがたいのか伝えても無駄なのだ。
貧民街出身の人間にしか響かない話。
稼がなくなると食べられなくなる。
その恐怖が私を動かしている部分があるのだ。
早くこの体を捨て去ってしまいたい。
古傷ばかりに翻弄されるこの体を。
私は必死に生きた。
だからこそ、歪んだのだ。
必死にならなければ生きられない状況が、私の人間として生かす為の紐帯を切り落としてしまった。
歪な人間もどきへと変えた。
本当は。
人生は適度に力を抜き、穏やかに過ごせば良いはずなのだ。
ある程度こそが最も幸福なはず。
そこで留まれないのは、私が愚かだから。
過去に振り回され、欲望を追い掛け、不安に支配されているから。
人生の、穏やかな暮らしの醍醐味を自ら捨てて、私はどこへ行こうというのか。
私は人をだめにするタイプなのだろう。
いや、人のだめなところを浮き彫りにさせるだけなのかもしれない。
優しさを当然だと思い始めたら、もう人間は終わり。
その手合は離れていくと追い掛けてくる。
だから、離れないよと伝えてから離れることにしている。
私は僅かな人たちを除いて、大多数の人と関わりたくない。
あなたが触れない私ならないのと同じだから。