私は昔から嘘が嫌いで。
それは嫌いという言葉では生温いほど。
憎むと言ってもまだ温い。
嘘はどうしてなのか、私の存在を否定しているようにさえ感じてしまうのだ。
理由は明確なのだけれど。
それほど嘘を毛嫌いする私が、嘘を仕事にしているというのは皮肉なものだ。
嘘を避けすぎると嘘にどっぷり浸かることになるなんて。
それなのに私は仕事が嫌ではない。
むしろ、この仕事に命を救われたようにさえ感じている。
嘘の世界は優しい。
醜悪なものを覆い、悲鳴を閉じ込め、痛みを隠す。
優しいけれど、それは蜃気楼で何もかもが現実味を持たず、あるべき体温が蒸発している。
優しく見えるその有り様さえ虚構。
それでも凍てつく現実よりは良いのかもしれない。
嘘から心を守るための人生を過ごす中で、私の心など守る価値がなかったと気付いた。