久しぶりに長期的な不調を味わっていて、昔のことを思い出すタイミングが増えた
息が白くなる部屋でうずくまり、このまま死ぬのか生きるのかを毎日選んでいた
生きるには金がかかる
仕事をしなければならない
でも、社会不適合であらゆる組織に馴染めない自分がどうやって?
悶々と考える中で餓えないために、死なないために、僅かな綻びを探すような毎日だった
どれほどの不調でも出来る仕事
人に会わなくても完結する仕事
探し当てたのはゴーストライターだった
浅い呼吸、肩から背中を通ってふくらはぎまで砂を詰められたような鈍い重さ、止まらない耳鳴り
それでも出来るのならと思い、食らい付いた
最近は忙しさにかまけて、昔の必死な努力を忘れていた
外に出るのも苦しいと思う不調でも、私が餓えを凌げるのは過去の私が活路を見付けてくれたからだ
私の人生は、凍える部屋で毎日死なない選択を続けた上に成り立っている
軌跡、なんて言葉で体裁を整えて言っていたけれど、そのような美しいものではない
のたうち、這いずった痕跡でしかない
それでも似たような感覚を持ち、同じ暗がりで生きている人がいるのだと思うだけで、遠くにマッチの炎が見えるような安心感がある
相手も同じく悶絶しているのだろうけれど
好きな作家がこの世はドラクエの毒の沼だと言っていた
歩くたびにHPが磨り減る毒の沼
そんな場所に生まれ落ちて幸せになろうなんて、現実を歪曲するのも大概にしろと
浄土宗ではこの世は穢れた末法の世界
だから、穢土と呼ばれる
穢土に生まれ落ちたなら、やはりこれからも這いずるしかない
凍えるあの部屋から私は出たけれど、違う場所でまた凍えている
餓えないために働かなければと
もう落ちることができない場所にいるのだと
踏み外せば首のローブが肉を千切るのだと