あの街にいると腕や足の傷痕を見ることが多い。
誰もが知らない振りをしている
傷痕があっても誰も何も言わない
気付いていても何も
きっと
誰もが心に似たような傷を持っているから
何も言えないのだろう
生きることが辛くて
呼吸をすることさえ耐え切れなくて
そんな痛みを酒でごまかすしかない
そんな人の集まり
だから、誰も何も言わない
何が起きても、何を見ても忘れた振りをしている
今がこれ以上辛くならないようにと
祈りにも近い気持ちが
人の視線に宿っている
人の言葉に滲んでいる
気が付いたら私はしっかりあの場に馴染んでいて
それが心地好いとさえ感じている
2丁目よりもきっとあの街の方が肌に合っているのだろう