宝石は何度聞いても良い
初めて聴いたのは柳楽優弥が主演をしていた映画だった
宝石、という曲
心に突き刺さったのは声だったのか
私が大好きで仕方がないピアノの音色だったのか
呼吸のように空気へ滲んでいくような、儚いけれど確かにあるもの
それを感じさせてくれる声
境界線を往き来しているような、たまに彼岸から届くような音
死にたいとか、生きたいとか、そんな軽薄な言葉では及ばない響き
死にかけている人は死にたい、生きたいなんてきっと考えない
「その場」にいる人間はただそこに在って、落ち着いたらお風呂には入ろうとか、帰りが遅くなるのが嫌だとか、そんなことさえ考えているのだろう
「その場」は私たちの日常と混ざり合い、緩やかに不可逆に変化していく
「その場」が彼岸の入り口だったと気付くのはいつだって後になってから
人間は、私はなんと脆く愚鈍なのか
大切なものを手放してからでなければ気付くことさえできない
手からすり抜ける宝物に気付くのは、いつだって地に落ち粉々になってから
すり抜けることに気付かず、すり抜けたことにしか気付かない
タテタカコはそんな私を慰めてくれる