人間が何かを失うなんて不可能
何も所有することのできない人間如きが、何を失うというのか
おこがましいにも程がある
付き合った相手、結婚した相手、苦心して手にした技術、知識、金や物
その全てが偶さか私の目の前にあって、少しスパンを伸ばしてみれば川の水のように流れていくものばかり
私の目の前にあることを所有とは言わない
自在に操れるのであればまだしも、人も知識も技術も金も何もかもが思う通りになんていかない
それなのに
私は今日も必死に何かを手にしようとしている
何も手に入らないとわかっているのに
いつか私の前から流れ去るものしかないと知っているのに
それでも私は人間風情である以上、悪足掻きをするしかない
愚かな人間には、愚かな真似がよく似合う
この終わりのない輪廻から脱しようと思うことさえ傲慢だ
最初から何も巡ってなんていないのだから
あるのは虚空
あるのは無
一切は虚構
それなのに歴然と私を私だと思っている何かが在る