本来、人間は何も得られない
故に失うこともない
行く川の流れは絶えずして、しかも元の水に非ず
今、私の目の前にあるあらゆるものが偶さか私の前に流れ着いただけ
長い尺で見れば私が所有しているのではなく、ただ流れているだけ
それを一時的に私のものなのだと、そう思い込むだけ
それなのに私は失ったつもりでいる
私などどこにもいないにも関わらず、私は傷付いたと妄想し自己を慰めようと必死になっている
こんな人生には耐えられないと叫びたくなっている
私の人生などないとわかっているのに
嘆息は絶えず、古傷だったはずの場所から血がまた流れる
鈍痛は鋭くなり、腹に鉛が詰められたかのように重い
私は33歳という年齢になって尚「普通」や「当たり前」を渇望しているのか
手に入らないとあれだけ思い知らされたものにまた手を伸ばし、手に入らないと一人絶望に暮れている
まだ何とかできないのかと悪足掻きをしている
どれほど考えても妙案など出てくるはずがない
死んだものを蘇らせるのが不可能なように
壊れたものは戻らない
私は幼かった頃に命を捨ててでも手に入れたかった平穏を、静かな日々を手にするつもりだった
そんなことはできないと何度も自殺未遂をして学んだはずなのに
私の人生はそのようにできていない
私はそのように生きていない
賽の河原で石を積むのはきっとこんな気持ちなのだろう