来月のどこかで手の平に目のタトゥーを入れることにした。
何故なのか私は昔から目に対して異様な執着がある。
私の目の色が明るいことがどうしても気に入らないのもきっとそのせいなのだ。
昔から私には目が足りないように感じて、本当にやるせない思いをしてきた。
しかし、私は伝統芸能や武道をしていたせいで体を弄れないままこんな年齢になってしまったのだ。
気が付けば私が舞台に立つことはなくなっているし、今なら目を増やしても大丈夫。
ようやく欠けていたものが私の体に刻まれる。
やっと。
そう思うと楽しみと言うよりも安心する。
ようやく私の体が正しいバランスを取り戻せる。
来月は一つだけにするけれど、最終的には五つ入れたい。
両手の平、両足の甲、そして胸の中心。
陰陽五行を示す核となる部分の全てに目を入れる。
目は魂の窓。
窓がたくさんなければ、私の精神は窒息してしまう。
私の目は汚濁にまみれた世界を見すぎて、もう駄目になっている。
だから。
せめて。
これから私の体に開かれる目には綺麗なものだけ見て欲しい。
生まれたことを後悔しないように。
生きている意味があると信じるために。
この世が愛する価値のあるものだと知るために。