左手の甲に目のタトゥーが入った。
東洋の呪術のセオリーにしたがって入れたもので、意味合いはかなり呪術的。
人の心に触れるような仕事ばかりしているから、私にはこうしたものがどうしても自衛のために必要だった。
これまでは『まだ平気』と自分に言い聞かせて来たけれど、もう今の段階に入ってしまったのならば四の五の言っていられない。
必要なものだと感じるのなら迷わず手に入れるしかない。
目は魂の窓。
目は最も高貴な感覚を持つ器官。
目は全ての感情を伝える力を持つたった一つの部位。
生まれ持った目は瞳が明るすぎて愛着が持てないけれど、この目であればずっと眺めていられる。
ようやく体に足りなかったものが備わり、心の底から安心した。
私の周りには悲哀を背負う人が多い。
生死の垣根を越えそうな人がよくいる。
そんな人たちはどうしてなのか、優しい。
人に関心がないから優しく見えるのではなく、本当に優しい。
そもそも関心がない相手のことをほとんど覚えていないから、気が付くと自然と好きな人ばかりが周りにいるように感じるだけかもしれない。
痛みは人を弱くする。
決して強くしない。
強くなったと豪語しているのは麻痺と強さを混同しているだけ。
傷は必ず人を弱くする。
回復する事はもちろんあるし、一生弱体化したままではない。
しかし、痛みは優しさという弱さを人に植え付ける。
私はそれが切なくもあり、そうでありたいとも思う。
人を恨み、世を呪い続けた私はこれからできるだけ穏やかな気持ちで過ごしたいのだ。
そうしなければあまりにも報われない事が多い。
生まれた事を呪わずに済む日が来ると願わずにはいられない。