小説を書き進めていると辛い記憶が溢れ出る。
忘れたいこと、忘れたことにしていた記憶。
私の小賢しさを冷凍保存されていた記憶が薙ぎ倒していく。
こんな思いをするために生まれたのかと思い、絶望に明け暮れた日々は遥か遠くに捨てたと思っていたけれど。
私は私が切り落とした四肢を眺めていただけで、その記憶は私の影となって這いずる私と常に一心同体だったのだ。
そんなことからも目を逸らし、私はただただ安穏と暮らす振りをしていたらしい。
私の過去と無関係な話なら、私の古傷を刺激しないと油断したがこの様。
私の精神は薄皮で溢れようとする怨嗟と悲嘆を何とか抑えているようなものだった。
いつだって、そうだったはず。
心理学も宗教も何もかも魂を救えない。
肉体を救済してなどくれないのだ。
さて、どうしたものか。
ほの明るいこの場所から出るには時間が掛かる。
でも、入ったのなら、どうせ出るのに時間と苦痛が伴うのなら。
この話をしっかり書き終えよう。
あとは誰かがこれを見て、自縄自縛で悶える私を見世物にしてくれたら、それでいい。
私だって、今の私の愚かさに笑えてくる。