いつもの川沿いを走っていると息を飲むほど繊細な夕焼けが眼前に広がっていることに気付いた
茜色の陽光がどこかで雲に遮られ、何本かの線に分かれて薄明るい空を爪痕のように裂いていた
胸を締め付けられるような、不意に抱き締められたような、そんな心持ちが生まれると私の足は止まってしまった
実は私の毎日はこんなに美しいものに囲まれ、ただ静かに過ぎている
私はこんなにも心を奪われる美しい光景があるのに、ただ暗いところばかりみて嘆息を吐いているのだ
こんなに美しいものがあると、そう思えるだけでも私は生まれた意味があったのだ
どれほど陰惨でどれほど悪辣な人生でも私には生まれた意味があった
ジョギングのせいで全身が心臓に支配されたかのように脈打ち、息が上がっている私は体の辛さなんて忘れてただ空を眺めながら茫然としていた
全ての苦痛が体から溢れる熱気と一緒に空気中へ溶けていくような心地良さが確かにあった
私が求めていたものはきっとこういうもので、誰かがそっと願いを叶えてくれたようにも思える
私はそれが言葉にできないほど嬉しかった
誰かに生まれたことを認められたようで