いつから月の満ち欠けに左右される体になったのか
満月も新月も、どちらも辛い
感覚が鋭いのは良いことばかりではなくて
こうした微々たる変化さえも私を狂わせる要素になる
幸いなのは、触覚だけが妙に鈍いこと
武道を長くやっていたからなのか、私は体の感覚が鈍いらしいのだ
目が見えなくなると聴覚など他の感覚器官が冴え渡る
それと同じように触覚が妙に欠落しているせいで、私は形而上の感覚が鋭くなってしまったのかもしれない
何にせよ、私は今日も疲れ果てている
気候に振り回され、月の満ち欠けに引き摺られ、仕事の忙しさに押し潰されている
耳鳴りは両耳の鼓膜を串刺しにするように響く
腹の底に鉛を入れられたように体は重く、陰鬱な気持ちは私の心を夜より暗くする
私にとって生きるというのはやはり苦行でしかない
病んでるのではなく、私は元々そうなのだ
死にたいわけじゃない
生きたいわけでもない
ただ、ここに私が在るだけ
人として生きるには欲望が必要なのだ
その欲が、私にはない
ここに在るだけでは許されないから、私は人間らしくして世に溶け込もうとしている
それが窮屈で、窒息しそうでしない日々を作っている
狂えるのならきっと楽なのに
狂えるほど無邪気に絶望もできない
楽しめるほど生に期待もできない
私の目には今日も鈍色で、朧なものばかり見える
きっと明日もそうなのだろう