大晦日のような静かで穏やかで、池に張る薄氷のように脆い雰囲気。
陽がとっぷり暮れた頃、コンビニへ向かう途中でそんな空気を感じた。
土曜日の夜だからなのかもしれない。
ハロウィンで皆が表へ出掛けてるからなのかもしれない。
私の住んでいる周辺は明らかに人の体温が足りていなくて、冬の滲む空気が皮膚の少し下まで染み込んでくる。
首を竦めたくなる寒さではない。
ポケットに手を入れたくなるほど冷気はない。
息だって、白くはならない。
それなのに体温の下がった住宅街はいつもの何倍も静かで寂しい雰囲気に包まれ、冬よりも寒い空気が漂っていた。
試しに息を吐く。
やっぱり白くはならない。
私は静かなところが好きで、寂しいものを求め、無意味なものを無意味だと教えてくれるものがなければ生きてさえいけない。
人生は虚しい。
生きる事は果てしもなく寂しい。
この虚しさも、寂しさも何もかもが意味を持たず、ただ生きて死へ向かうだけの人生。
意味ありげなものは全て虚構、あの感動は幻、忘れられない光景は錯覚。
こんな日は鬼束ちひろを聞くに限る。
こんな日は蛍以外は聞く気になれない。