私が吉高由里子にハマったのは今から10年前にやっていた深夜ドラマだった。
「トンスラ」という文章を書けなくなった小説家の役を彼女がしていた。
私はそのあまりにも異様な雰囲気を放っている若い女性が、吉高由里子という名前という事すら知らなかった。
そして、彼女の役に非常に強い影響を受けたように思う。
今から10年前、私は大学生だった。
大学二年生という時期を私はただただ無為に過ごしていただけだったのだ。
同じ大学に通う人間を心の底から見下していたし、成績だけは良かったからその傲慢さに拍車がかかってしまった。
20歳という年齢は私にとって意味がなかった。
若い、何でもできる、可能性に満ちているという話の全てが私の心の表皮をなでていくばかり。
その実、私は人生に絶望をしていた。
そんな折、吉高由里子が演じる役が「やりたくなったらやれば? そんなもんでしょ、男と女なんて」というセリフを言ったのだ。
私はその言葉に影響を受けたように思う。
言葉そのものもそうだけれど、人生や生きるという事についての諦観が極まっているその雰囲気が好きだったのだ。
当時の私の心境を言葉にすれば、きっとこんな雰囲気になるのだろうと感じた。
何もセックスに限らない。
死にたくなったら死ねば? という言葉に置き換えても使える雰囲気が漂っている。
私は楽しい事が好きな人間だと自覚をしているけれど、もう精神の至る場所が壊死している。
そんな自分を表現してくれる言葉を探してるのだ。
先日、友人と話している時「〇〇君(私の事)のタイプが分からない」と言われた。
私は非常に身持ちが堅い人間に思われていて、軽はずみに肉体関係を持たないように思われているらしい。
もちろん、そういう面はある。
しかし、私が面白いと思った異性が良いと思ってくれるのなら、結構簡単に肉体関係を持つ。
一般的な性欲にかまけて誘うタイプではないから身持ちが堅いと思われているだけなのだ。
私は時折、濁流にのまれているだけのような気持ちになる。
あちらこちらへと関心が飛ぶし、行動を起こそうと思ったらすぐ動いているけれど、実は振り回されているだけなのかもしれない。
私は今日も煮え切らない一日を生きた。